皆様、土地家屋調査士という国家資格をご存じでしょうか?土地家屋調査士とは、不動産の登記簿(登記記録)の「表題部」の新設、変更・更正、閉鎖等の代理申請を行う土地建物の表示登記の専門家です。
我々土地家屋調査士が、相続の関係でお世話させて頂く場合で多いのは、相続人の間で土地を分けあう為の分筆登記を行う時や、相続税の物納の為の土地の境界確定測量、地積更正登記を行う時です。また、この分筆登記・地積更正登記を行う上で、前提として通常境界確定測量を行わなければなりません。
【第85号】Vol.2では全国の公図(地図に準ずる図面)地域の約50%は、公図の形状と現地の形状に1m以上の大きなずれがあるというお話をさせて頂きました。今回は、よくご質問を頂く「地図」についてのお話をします。
地図と言っても一般的な住宅地図などではなく、法務局に備え付けられている「不動産登記法14条地図」の事です。法務局における地図とはこの14条地図を指します。最近は福岡市でも14条地図整備が進んでまいりました。
では、この「地図」とは何なのでしょうか?
◇法務局で取得出来る「地図」及び「地図に準ずる図面」の概要
■地図 ・・・ 14条地図の事である。国土調査(地籍調査)や区画整理などに基づいている為、現地復元性が高い。
■地図に準ずる図面(公図) ・・・ 一般的に字図と呼ばれ、現地復元性に乏しい。土地の形状の概略や隣接土地の位置関係の概略を表すものとされる。
法務局で、所謂「字図(あざず)」をくださいと請求すると、通常上記のいずれかが交付されます。この地図と地図に準ずる図面とは一見するとよく似ていますが、実は内容は大きく異なります。また、この地図が備え付けられている地域は「地図地域」と呼ばれます。
下記の「地図を見るときの注意点」の(4)精度区分によって精度の高さは地域によって違いますが、通常地図地域は現地復元性が高い地域と言えます。簡単に言うと、地図は地図に準ずる図面と違って、地図をスケール(縮尺を合わせて)で測った数字と、現地を巻き尺等で測った数字がほぼ一致するということです。
(※プリンターにより若干ズレが生じるので注意が必要。法務局で取得しても若干ズレがある場合がある。図郭線の座標を見るとズレが分かる。※地図に準ずる図面でも正確な場合もある。)
地図を見るときの注意点
①表示年月日・・・地図には分筆や合筆が反映されるので、いつ取得したかがポイント。
②図郭線及びその座標値・・・九州の場合、阿蘇山付近に原点(0.000,0.000)があり、原点からの座標値(原点からの距離=ミリまで)が記載されている。
③出力縮尺 ・・・通常1/500が多いが、
1/1000などの場合もある。
④精度区分・・・甲1、甲2、甲3、乙1,乙2、乙3までの段階があり、甲1が最も精度が高く、乙3が最も精度が低い。
⑤座標系 ・・・地域によって異なる。九州ではⅡと書いてある。
⑥分類・・・ここで「地図」か「地図に準ずる図面」かが分かる。
⑦種類 ・・・国土調査(地籍図)か区画整理など作成原因が分かる。
⑧備付年月日
土地を相続するときは境界問題も同時に相続することになりますので、それぞれの土地が地図地域なのか、そうでないのかということだけでも知っておくと、将来の備えの参考となると思います。
江藤土地家屋調査士事務所(福岡市博多区)
土地家屋調査士 江藤剛
趣味:美味しい物を食べること。福岡をこよなく愛すること。